【完】甘いカラダ苦いココロ
「タカ、『コットンフラワー』一つ」
チケットが落ちた辺りの人混みを未練がましく見つめていたら、良く通る男の人の声が横から聞こえた。常連なのかスタッフと親しげに話している。
ハーフ……ではないかな。でもなんとなく日本人離れしてる。鼻筋の通った綺麗な横顔。つい見とれていた。つまり、とても好きなタイプの顔立ちだったから。格好いい人はいるけど、ここまで綺麗な人ってなかなかいない……。とか不躾に見つめていたからか目が合った。
我に返って、慌ててわざとらしく踵を返す。み……見とれ過ぎ。失礼だよ私。恥ずかしくて俯いたまま空いてる席を探した。どこも一杯で居場所がない。実貴も見かけないし急に寂しさが襲ってきた。
こんなに人がいても大音量の音楽が聞こえていても一人ぼっちだ……。