【完】甘いカラダ苦いココロ
もう取り繕うことが出来ないほど俺のくだらないプライドはずたずたで、ココロは丸裸だった。
今はっきりと感じる沙耶を失うかもしれないという、恐怖心。ソレは人を攻撃的にする。
「コーヒーでも、飲む? 今、開けるね」
俺と目を合わせないようにしながら、ぎこちない動きで鍵を開ける沙耶の腕を引く。
「こんな遅くまでなにしてたの? あの男となんかイイコトでもしてきた?」
金属とコンクリートのぶつかる高い音が廊下に響く。目を見開き、肩を震わせた沙耶が取り落とした鍵。
それを拾い、自分で開ける。
「入りなよ」
まるで自分の部屋のように固まる沙耶を中へと促した。