【完】甘いカラダ苦いココロ
 
 ゆっくりと入ってくる沙耶を腕を組み、壁にもたれて待ち受ける。暗い部屋の明かりもつけず、窓からの月明かりだけが俺と沙耶を照らしていた。

「く、暗いね。今、電気つけるから……」

 異変に気づいたのか、俺の目を見ないでに通り抜けようとする沙耶の腕を掴む。

「きゃ! ……痛っ」

 無造作に掴んだ沙耶の細い腕が俺の手の中で小さく軋んだ。
 
「なに他に男つくってんの?」

 キス出来そうなほどの距離に顔を寄せて低い声で呟く。

「……翔梧だって、可愛い彼女とか……他にも相手がいるじゃない」

 強い口調の口答えも、目を逸らして肩を震わせている姿では効き目も半減だ。

「だから?」

 ワンルームの狭い造りの廊下で、行く手を阻むようにじりじりと詰めていく。反対側の壁に追い込んで沙耶の着ているシャツワンピのボタンを引きちぎった。

「きゃあっ!!」

 驚きと恐怖に小さなカラダを更に縮こませる。


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