夕陽の向う
2-3
「僕は、そうは思わないんだよ。
癌が発見されてから、いろいろなことが次々あって、そのことを考えてみるとね。
例えば、手術の前なんかには、
『この手術で死ぬかもしれない』
とか考えると、絶望的にはならないまでも、元気が無くなるよね。
でも、手術が成功して、症状が回復してくると、また元気が出てくるだろ。
人は、昨日よりも進歩した、昨日よりもいい状態にある自分を見るとき、希望と元気が出てくるんだよ。
昭和30年代の日本の皆が、今よりもずっと貧しかったはずなのに、今よりもずっと元気で希望を持っていたって、幸せだったって言われるのと同じだと思うけどね。」
睦子は聞いている。
元は何を言い出すのだろうかと思いながらも、元がこんな風に話し始めるときは、大事なことを言おうとしているのだと思うから。
「社会のことは複雑だけど、一人の人生を考えると、もう少し簡単だよ。
昨日よりも進歩した、昨日よりも成長した、昨日よりもレベルが上がった自分を見ることができれば、人は幸せだし、元気が出る。
明日の自分が、今日よりもレベルが上がった自分であって欲しいから、努力したり勉強したりするわけだろ。
でも、レベルは一生上がり続けるわけではないよね。
あるとき、昨日よりレベルの下がった自分を見ることがある。
人生が続くなら、またレベルを回復しようと頑張れるわけだ。
でも、頑張っても、以前の自分のレベルに回復できないと思った時、人は何を目標に頑張ればいいと思う?
しかも、人にもよるけど、あるとき、先が見えることがあるんだよ。」
「僕は、そうは思わないんだよ。
癌が発見されてから、いろいろなことが次々あって、そのことを考えてみるとね。
例えば、手術の前なんかには、
『この手術で死ぬかもしれない』
とか考えると、絶望的にはならないまでも、元気が無くなるよね。
でも、手術が成功して、症状が回復してくると、また元気が出てくるだろ。
人は、昨日よりも進歩した、昨日よりもいい状態にある自分を見るとき、希望と元気が出てくるんだよ。
昭和30年代の日本の皆が、今よりもずっと貧しかったはずなのに、今よりもずっと元気で希望を持っていたって、幸せだったって言われるのと同じだと思うけどね。」
睦子は聞いている。
元は何を言い出すのだろうかと思いながらも、元がこんな風に話し始めるときは、大事なことを言おうとしているのだと思うから。
「社会のことは複雑だけど、一人の人生を考えると、もう少し簡単だよ。
昨日よりも進歩した、昨日よりも成長した、昨日よりもレベルが上がった自分を見ることができれば、人は幸せだし、元気が出る。
明日の自分が、今日よりもレベルが上がった自分であって欲しいから、努力したり勉強したりするわけだろ。
でも、レベルは一生上がり続けるわけではないよね。
あるとき、昨日よりレベルの下がった自分を見ることがある。
人生が続くなら、またレベルを回復しようと頑張れるわけだ。
でも、頑張っても、以前の自分のレベルに回復できないと思った時、人は何を目標に頑張ればいいと思う?
しかも、人にもよるけど、あるとき、先が見えることがあるんだよ。」