夕陽の向う
2-4

「人にもよるけど、人生の先が見えることがある。

人生の終わりがはっきり見えないにしても、日々自分のレベルが下がり始めてるのに気がつくこともある。

もう、以前のレベルには戻れないと思うときがある。


そんな時、それでも、日々頑張るための基準は、死ぬまでの自分の毎日のレベルを全部足した、合計をいかに大きくするかということだと思うんだよ。

僕は、今、そう思っているんだよ。」


睦子の顔に、少し ? が浮かんでいるのが判ったのか、元はさらに説明を続ける。


「人生の価値を、団子を作ることに単純化してみる。

さっきから言ってる人のレベルを、1日に何個の団子が作れるかということに置き換えてみるんだよ。

レベルが上がるということは、昨日より今日、今日より明日と、作れる団子の数が増えていくことだ。

こんなときなら人は、さらにたくさんの団子が作れるようになろうと挑戦できるし、そのことを秤にして自分に自信も持てるから、人生を幸せに思える。


でも、だんだん作れる団子が減ってきたとき、しかも、もうすぐ団子も作れなくなるかもと感じた時、何を秤にして、自分の団子屋人生を続けるかだけどね。

それは、作れなくなるまでに、合計何個の団子を作れるかということだと思うのさ。

長い間作り続けることではなくて、合計何個作れるかだよ。

100日間作り続けても、毎日10個しか作れないのでは、合計1000個だろ。

30日間しか続けられなくても、毎日100個作れれば、合計は3000個になるじゃないか。」
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