夕陽の向う
3-4

ブログを開く少し前から、喉の筒の蓋をはずしておくのが普通になった。

声を出すときは、筒を指で押さえて蓋をする。


余命宣告から3か月くらいに、初めて胃瘻を使用した。

その後も、普通に時間をかけて食べられる時もあるが、胃瘻を使う機会は増えていく。

公共の交通を使うのは控えるようにしたが、運転はできるので、不便は無い。


友人が大勢で、元と睦子を温泉に連れて行ってくれた。

友人の会社の保養所で、新年会のノリで大騒ぎもした。


その後、花見にも行った。

この時も、多くの友人が騒いでくれた。

元自身は、食べる量や、飲む量は限られるのだけど、皆が楽しそうにしてくれて、それを見るだけで元気が出る。

なんだか癌細胞が少し減った気がするのだ。


ブログを書いて、少しでも人の為になったらと考えたりするけれども、こんな時には、自分が与えたり、遺したりしていくものに比べて、自分がもらってきたものが、どんなに大きいかを思い知らされる気がする。


余命宣告から、4か月ほどして、ホスピスに入った。

以前申し込んでいたところが、権利ができていたのだ。


熱が出て、入院した時、その病院が、申し込んだホスピスのある病院だったので、ホスピスのほうに移った。

ホスピスに入っても、体調に問題なければ、帰宅できる。

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