夕陽の向う
4-4

余命宣告から6カ月が過ぎた。

余命3~6カ月。

と言われた、長めのほうを過ごしたことになる。


「これで、『長くて1年~2年』と言われたほうへの挑戦だわね。」

睦子は意識して元気よく言った。

元は優しく笑った。


その夜、元は救急車に乗ることになる。

病院(ホスピス)からは外泊許可をもらって、家にいたのだけれど、朝から痰がたくさん出るなと思っていた。

痰を柔らかくする薬も飲んでいて、いつもは咳をする感じで取れるのだが、その日は5~10分おきに取らないと苦しくなる。

それでも取れているうちは良かったのだが、突然、吐いた息が吸えなくなった。

時間的には数十秒だったかもしれないが、息が吸えないということが不安となって襲ってきた。


以前、帰宅の時は、蒸気の吸入器とか吸引機とかも借りて持ち帰っていた。

でも、かさばることもあり、今回はいいだろうと横着をして、借りてきていなかった。


不安もあるので、病院に帰ることにした。

近くに住む姉の車で行くことも考えたけれど、車の中で息が詰まったらどうしようということで、救急車を呼ぶことにしたのだった。

考えてみれば、最近、こんなに何度も入院しているけれど、救急車に乗ったのは初めてだった。


救急車の隊員が、痰の吸引をしてくれたので、呼吸の心配は無くなったのだが、むしろ狭い固いベッドで、肩が痛くなってしまった。

以前から、癌の影響で痛みの出ていたところだ。


病院に着いてから、痛み止めの、モルヒネを打ってもらった。
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