夕陽の向う
4-6

『6カ月を超えたのだから、次は1年まで、頑張って欲しいのに。』

睦子は、元が眠っているベッドの横で、何度も涙を流した。

もう、その願いも、聞き届けられることもなく、元の命が終りに近付いているのが、いやがおうにも、目に見えてくる。


もう、お絵かきボードに書くこともつらくなってきたとき、睦子が、

「ありがとう」
というと、

「なんで?でも、シアワセダー」と書いてくれた。


睦子は、

「あの世に行っても、普通に暮らせるように、
きっとなっているから、
元、私のことを、待っていてね。」

と言った。


返事を期待したわけではない。

でも、元が、お絵かきボードに

『ゆっくり』

と書いた。

睦子は、もう一度、ゆっくりと、

「あの世に行っても、私のことを、待っていてね。」

と、繰り返した。


元は、少し笑顔になって、ゆっくり、少し首を縦に振った。

睦子は、元が、待っていると、約束してくれたと思った。
< 24 / 27 >

この作品をシェア

pagetop