夕陽の向う
1-4

二人は、ほぼ黙って話を聞いた。

胃瘻のことは、以前話を聞いていた。

食事がのどを通らなくなったときに、直接胃に食物を入れられるように、穴をあけて人口の蓋を付けておくものだ。


先生の話は続く。

「検査はまれにガン以外の影をとらえることもあり、手術の傷跡が写っている可能性もなくはない。
また、自分は神様でないので、あなたがいつまで生きるか、本当のところは分からない。」


元は、これは先生の優しさだと感じた。
医者は、常に患者が希望を失わないように気を使うのだろうと。


睦子は余命のことで頭がいっぱいになった。

他のことは、確かに聞いたけれども、具体的な病状がどうだとか、これから先どうしていく予定だとか、そんな言葉は、ちっとも心に引っかからない。


「質問は?」

と最後に先生から聞かれた。

二人はお互いに顔を見合わせた。


状況の把握だけで精一杯で、質問なんて何一つ出てこない。




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