夕陽の向う
人生の秤
2-1

1週間後に、胃瘻を作る手術のために入院をした。

入院にはもうだいぶ慣れているし、手術も、前の癌の幹部を切除するのに比べれば、そんなに大変ではない。

でも、おなかにプラスチックの蓋がついた。

その使い方も、睦子と一緒に教わった。

今すぐに使い始めるわけではない。

必要な時に、すぐに使い始められるように、体力のあるうちに付けておくという考えだ。

前の手術で、喉からプラスチックの筒が出ているので、だんだんアンドロイドになっていくようだ。


この、喉の筒も、喉が閉塞して呼吸がしにくくなったときのために付けてある。

普段は、蓋をしておけば呼吸も普通だし、声も出せる。
蓋を取っても、声を出すときだけ指で蓋をすればOKだ。

声が出せるのが、よかったと、元は思う。

前の手術の時に、声は出なくなるかもと言われていた。
でも、声帯を残すことができたのだ。


ホスピスについても紹介された。

また、抗癌剤を使うかどうかと聞かれた。

抗癌剤を使っても、完治する望みはほぼ無いけれど、進行を抑えることができて、結果、寿命が少しでも延びるかもしれない。

でも、このことに関して、元はあまり迷わなかった。

「抗癌剤は、使いません。」
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