夕陽の向う
2-2

「抗癌剤も使ったほうがいいんじゃないの?」

睦子は、後で、元に聞いてみた。

「抗癌剤を使うと、副作用が大変だよ。」

元は答える。

それは、睦子も知っている。


1年ちょっと前に抗癌剤治療をした。
その時、元は確かにつらそうだった。


「でも、前の時は、大変だったけど、頑張れたじゃない。」

「あの時は、それで完治すると思っていたから。」

「今回だって、治るかも知れないでしょ。」

「・・・・」


少し黙ってしまった元を見て、睦子は少し『しまった』と思う。

『治るかもしれない』は、ただの慰めに聞こえただろうか。

でも、

「でも、少なくとも、寿命は延びるのよ。
私は、元に、少しでも長く生きていて欲しいもの。

できれば、もしかしたら、・・もしかしたらよ・・、私が死ぬのと同じころまで、生きていてくれるかも知れないって、ちょっと期待しているんだもの。」


元は、さらに少し考えてから、ゆっくり話し始めた。

「僕は、そうは思わないんだよ。・・・」
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