REAL HOPE Ⅰ



「言いたくない。」


本当は違う。言いたくないんじゃなくて言えないんだ


「レツになんて言いたくない。」



違う、レツに知られたくないんだ

こんなにも惨めな私を、


言えない

誰にも分からない私の気持ちなんか


分かるはずがない


特にレツみたいに関東最強の総長でみんなに憧れを抱かれている人間になんて分かるはずがない…


うつむいていた私はレツにこの前みたいに怒鳴りちらされるのかと思っていると



「言いたくねぇならいい、」


それだけ言って、またがっていたバイクのエンジンを切って

煙草に火をつけた。

カチッとジッポの硬い音が響くと、レツの煙草の匂いが少しだけ届いた。



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