「ねぇ、次の授業が始まるよ。」
iPodのイヤホンを取られてそう言われ、俺は目を覚ました。
声のした方を見るとあの女が俺の横に屈み俺の顔をじっと見ている。
媚びたような甘えたような声がイラッとくる。
「あ゛?」
 イライラを抑えることもしないで返事をしたら、意外にも通じたようで。
「え、ご・ゴメン。次の授業が始まるから。」
焦ったような声音で謝ってきた。
俺が無言でいると、隣に座って聞いてもいないのに自己紹介をしてきた。
 「あ、私鈴暮空(すずくれそら)って言うの。えと、あなたは?」
 「雄哉。」
 不愛想な俺にかかわらず、勝手に話を続ける。
 「私、こないだ転校してきたばっかであんまり友達いないんだ。この学校のこといろいろ教えてね。」
 「そんなん同じクラスのやつに聞けよ。」
 めんどくさがりながらも答えると、空はいきなり爆笑しだした。ひとしきり笑うとそれでもまだ笑い足りないのか、ふふと笑いをこぼしながら俺たちは同じクラスなんだと告げてきた。
 まあ、笑いだしたことからなんとなく気づいてたが顔にはださず少し驚いた。
 「HRにでてなかったけどまさか気づいてなかったとは、あ!!でもさ、さっき同じクラスの人に聞けって言ってたよね!じゃあ今度からよろしくね、雄哉。」
 「はあ?!」
 あまりの強引さに驚き、すっとんきょうな声をだした俺を尻目に鈴暮空と名乗った女は屋上の入り口に向かって走って行った。
 
今までにそんな人が周りにいなかった為、雄哉は怒るのも忘れ、ただ呆然と彼女のでていった扉を見つめた。
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