星の瞬く時間に
「お前ら来るの遅いから
席取っといてやったんぜー。
気が利くやろが」
さも自慢げに満面の笑みで凌平は言う。
さながら、褒めて褒めて!と
しっぽを振っている犬のようだ。
「はいはい。ポチ、よく出来ました」
「ワン!ておい。ポチって何かやん」
「てかのぶくん、また寝てんの?」
「こら。シカトすんじゃねえ。
ノリつっこみスルーされるのが
1番恥ずかしいんだけど」
ポチの言葉を華麗にスルーして
授業の準備を始める。
あ、駄目だ。口がにやける。
「ほらほら。あんまりふざけんと。
凌平、席ありがとうね」
私が必死で真顔を作っていると、
前の席から優がフォローを入れる。
「うう。さすが優。何か逆にありがとう。
柚梨、お前も少しは見習え!」
いやいや。
そいつ、私たちの会話に
大爆笑してましたけど。
「ばーか。あれは、あたしなりの
愛情表現だっつーの」
「いや、どこがや」
嘘ではなく、本当にこれは
私なりのコミュニケーションなのだ。
私が冗談を言えば、
それに合わせて返事を返してくる。
そんな、凌平との会話のテンポが
心地良くて、ついつい素直ではない
言葉を紡いでしまう。
しかし、凌平もそこをきちんと
理解してくれている。
…と思う。
そんな凌平だからこそ
こんな会話が出来るのだと、
本当は優しい奴なんだと、
しみじみ思う。
本人には口が裂けても言わないが。