中途半端なオトコマエ!
オレは、はっきりと自覚した。オレは必要とされていないってことを。

社長も専務も、オレが辞めたことを、むしろ喜んでいるだろう。

タマネギだってジャガイモだって、しばらく放っておけば芽がでるのに、オレは、10年間も芽が出なかった。

そんなタレントは、早く切り捨ててしまいたいはずだ。

オレは、自分で自分の首をしめてしまったのだ。

バカ、バカ、とおるのバカ野郎!

「志研あらため派遣とおる」でも「選挙カーとおる」でもいい、とにかく、歌い続けなくてはいけなかったのに……

オレにとって、「生きることは歌うこと」だったのに……

オレは、四畳半のアパートの畳の上に倒れ込んで、しばらく動くこともできなかった。
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