中途半端なオトコマエ!
しばらく歌い続けている。

おばあさんが立ち止まって聴いてくれた。

うおお! こんな年配の女性にもオレの歌は通じるんだあ!

と、おばあさんは「あんた、孫に似とるなあ」としみじみオレをのぞきこんだ。

「こづかい、あげようの」

硬貨をティッシュに包んで、ギターケースの中に置いてくれた。

ちょっと、落胆した。が、もちろん、お金は有り難くいただくことにする。


あまり立ち止まる人はいない。

もう、終わろうかと考えていると、学校帰りの女子高校生が、4人寄ってきた。

歌い終わると、拍手をしてくれる。

なんだか、嬉しくなる。

みな、一様に陽焼けしていて、テニスのラケットがスポーツバッグからはみだしている。

「ありがとう。みんなは、テニス部?」

「うん」

一人が返事をし、残りの子は、ただくすくすと笑う。

「みんな、がんばっているんだね。え? 新人戦? あー、大会があるんだねえ。そうか……」

オレは、ひとりひとりを見る。

「じゃ、お兄さんが……こらっ、そこ、だれがおじさんやねん!」

「おじさんじゃん?」と言った子がいたので、慣れない関西弁で、すかさずツッコム。

「えー、お兄さんが、皆さんの幸せを祈りつつ、歌います」


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