中途半端なオトコマエ!
子どもたちがうるさくなった。

場所を移動しよう。

遊具のある場所じゃなく、ボート乗り場のある方に行こう。

カップルなんかに、しっとりと聴いてもらおう。

オレの歌は、恋を囁くのには最高のBGMだぜ。


移動のために、しゃがみ込んでギターケースの中をのぞいていたとき。

「志研とおるさん?」

「!?」

顔を上げると、バイト仲間の山本美沙がいた。手に紙袋を提げている。

「ああ、志研さんだったんだ。やっぱり。もしかしたらそうじゃないかと思ってたの」

美沙が近づいてきて、嬉しそうにしゃべる。

「よかった」

無邪気な喜びよう。

なあんだ。

美沙が時々オレをじっと見ているのはオレのことを好きだから……じゃなかったのか?

オレが「志研とおる」かどうか考えていたってことか?
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