中途半端なオトコマエ!

「どうしても獣医さんになりたくて、浪人までしたんだけど……うまくいかなくて……」

「獣医さんか……似合うなあ」

チワワを抱いている美沙を想像して、オレはそう答えた。

「落ちた時点で、あきらめて他の進路を見つければよかったのかもしれないけど……ショックが尾を引いて出遅れて、行くトコなくて」

「うん。つらいと、体が動かなくなるんだよ」

「しょうがないから、バイトでも、と思ったけど……
近所の人とか、友だちとかに会いたくないの……『どうしてる?』って、きかれるのがいや」

その気持ちはオレもよくわかる。

オレもうまくいかないときは、同じようなことがあった。

「それで、ちょっと離れたあのコンビニに行ったわけだ」

「うん。なんか、半分自暴自棄になって……。でも、よかった。……志研さんに会えたし」

「志研とおるは、やめたんだ。今は、本名の北川透」

美沙は目を見開いて、オレを見つめた。

「やめたの? 志研とおる……」

「うん。いろいろあるさ、人生は。オレなんか、10年、売れない歌手」

美沙は、驚いた顔をした。

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