中途半端なオトコマエ!
「そうだよね。確かに。志研さんは10年も頑張っているんだものね。あたしは、まだ2年くらい」

「別に、獣医にならなくてもいいじゃない。トリマーとか、ブリーダーとか、ペット関係の仕事は他にもあるだろ?
でも、どうしてもなりたいなら、もうすこし頑張ってみればいい。
1年、2年なんて、大したことじゃない」

美沙はじっとオレを見つめている。

きれいな瞳。

「ありがとう。元気になれる気がする」

美沙を見ているうちに「志研とおる」時代の記憶がよみがえってきた。

受験生のために、明るく元気が出るようなことばかりを言っていたあのころ。

「ぼくの歌の中にもあるように、努力を続けることが大事ですね。
苦しいときは、ぼくの歌を聴いて、がんばってください。
ぼくは皆さんの夢が叶うのを応援しています」

オレは、そんなことを言い散らかしていた。

応援してほしいのは、自分自身なのに。

自分自身は、人を励ますことなんておこがましい状態なのに。

なんて、いい加減だったんだろう。



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