中途半端なオトコマエ!
「汚いけど」

美沙は黙って入った。

オレのアパートだった。

目につく家具といえばフトンのないこたつ……。

究極のシンプル・ライフ。

四畳半。

でも、これでも、今のオレには広すぎるくらいだ。

できれば、美沙ともっと接近したかったから。

美沙にクッションを渡した。

「すわってて」

美沙は、黙って腰を下ろした。黙りこくってる。



オレは歌った。

♪きみの想いが届くとき
 きみの願いが実を結ぶ

 サクラサク
 サクラサク

 その日を待つよ

 サクラサク    


これ以上ないほど、想いを込めた。

美沙は泣いた。オレも泣きそうになっていた。

「いい歌だと思う。あたしが、頑張っていたころの思い出がよみがえるの」

「あたしは、やっぱり、もういちど、がんばってみようかな。……もう一度だけ」

「もう一度、予備校にいって、来年、受験しようかな」

美沙はぽつりぽつりと話した。




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