中途半端なオトコマエ!
「隠れて」

ルミが急いでベランダの窓をあけて、(こっち!)と、手で合図した。

「あとで逃がすから、静かにして」

オレはあわててベランダに出た。

ルミが内側から鍵をかけ、カーテンを引く。

ルミが玄関に走って行く気配がした。


「おい、どうした」

オレの背中が、ぞくり、とした。

例の男だ。まだあの男と続いていたのか。

「あーん。着替えてたんだもん」

「ふん。服なんか着なくてもいいじゃないか」

「うーん。やあねえん」

男との会話がガラス越しに聞こえた。

それにしても、何だ、この色気は。

ルミの声は、オレと話しているときと、色気がまったく違う。

オレとの会話が「10イロケ」なら、男との会話は「95イロケ」くらいだ。

恐ろしいな。今さら気づくのも、バカだけど。

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