中途半端なオトコマエ!
「哀れ……か」

オレは思わず小さな声を出した。

そして、中に聞こえなかったかと、一瞬どきりとした。

大丈夫みたいだった。

部屋の中ではルミたちがいちゃついているようだった。



おれの名前、「北川透」は、本来「透きとおるように美しい、北国の川の流れ」という意味だ。

10年前、デビューしたときは

「ピュア・マインド ピュア・ボイス」

というキャッチフレーズを使い、「純真な少年」というイメージで売り出した。

夢中で歌っているうちに、時間が流れた。時間ばかりが流れた。

今は、ホステスの部屋から閉め出され、ベランダでしゃがみ込んでいる。


もう、徹頭徹尾、空前絶後、哀れなオレ。


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