中途半端なオトコマエ!
ガラス窓が開いた。

「今のうち! 逃げて」

オレは、静かに急いで部屋に入り玄関の方へ向かった。

バスルームからシャワーの音が聞こえている。

ルミが指さすまでも、ない。

ドアを開け、転がるように出て行った。

エレベータを待っているのがもどかしくて、階段を一気に降りて、走った。

靴をはいていないことに気付いたのは、マンションの出口の階段下に敷いてある、尖った砂利を踏んでからだった。

仕方なく、手近なコンビニで適当なスリッパを買って、履いて帰ることにした。

コンビニの中の店員も客も、オレの足元など見ていないことが幸いだった。

こんな小さなことでも「不幸中の幸い」だな、と身にしみて思う。

それほど、今夜のおれはついていなかったのだ。


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