中途半端なオトコマエ!
今までの、鬱屈が一気に爆発した。

ドアに駆け寄ってばたんと開け、部屋を出た。

そして、「後悔するぞ!」という社長の怒鳴り声を封じ込めるように、力任せにドアを閉めた。

「もう、これっきりだ!」

そう言い捨てて、階段に向かった。

すり切れた赤いカーペットが敷き詰められた狭い階段。

三階から一階まで一気に駆け下りた。

薄暗いビルの中から飛び出すと、外は、初夏の陽光が溢れていた。

軽いめまいを感じながら、目をつむって深呼吸し、ぜいぜいと荒い息を整える。

(辞めてやった……)

解放感。

と同時に……たとえようのないさみしさ。

(あっけないもんだな……)


しかし、それから5分も経たないうちに、オレは社長の言ったとおり「後悔」していた。


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