短編集
気がつけば、時計は11時を回っていた


「あっもう帰らないと」

帰る頃にはもう敬語ではなくなっていた


「あっまじで?
家まで涼が送ってくれるって」


「えっ…俺?」



「こんな時間に女の子一人で帰すのかよー」


「はいはい…送ればいいんだろ」

送ってくれるってことは…二人っきり?


どうしよう…緊張しすぎて何も話せなくなるかも



「んじゃ俺帰るからー

涼っちゃんと家まで遅れよ」


「おぅ…」



シーン―――

あたしたちはしばらく無言でその場に立ち尽くしていた



先に口を開いたのは…

「家…どこ?

ほんと、哲也のやつはよー」



やばい…すごいどきどきしてるよー

2ヶ月前まではこんなことになるなんて、想像もしてなかった…



「あっこっち………です」


そういってあたしたちは歩き始めた


ときどき車が通ると、彼はあたしを守ってくれる



あたしの顔はみるみるにやけていった


最初は無口な人かと思ってたけど、ほんとはよくしゃべる人で、さっきあまり話さなかったのは


人見知りが激しかっただけ


だっていうのを追い追いあたしは知った
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