短編集
映画を見ている間でも離れることはなかった手


左手にはお揃いのペアリング


そして右には気持ち良さそうに寝ている秀哉


こんなことにでも幸せを感じてしまうあたしは、


このさきもこんな幸せがずっと続くと思ってた…



人生って本当にうまくいかないもんだよね


『映画よかったねー
感動したっ!また行こうね』


「………うん、またな」

そういう秀哉はやっぱり悲しそうな顔をしてた



今日の秀哉はやっぱり変だ

けど、あたしはそんなに深く考えないようにした


『お腹空いたねー
ご飯食べに行こうっ』


「その前にさあ、ちょっと行きたいところがあるんだ。いい?」


『うっうん…いいけどどこに?』


「ひみつ」

そう言って黙り込んでしまった


歩いている途中お互い一言も喋らず、あたしはなぜか嫌な予感がしたんだ


この繋いでいる手が離れてしまうんじゃないかと



30分ぐらい歩いて着いた場所は、どこかの公園だった


『あっここ…』

そう、この公園はあたしたちが付き合い始めた公園だった


この公園で秀哉から告白されたんだ


なんか懐かしいなあ


『懐かしいねっ!秀哉がさあ、ここであたしに

「奈美が好きだ!俺にはお前しかいない」

ってあたしに言ってくれたんだよねー』


「あれっ?俺そんなこと言ったっけ?」

そう笑いながらいう秀哉が本当に愛おしかった


『言ったじゃーん。
もうさいあ……っ』


言っている途中に秀哉があたしに抱き着いて来た


ギュッと…それでもそっと優しく


『しゅう…や?』


「奈美…好きだよ」

『あたしも…秀哉大好き』


そう言って秀哉はそっとあたしにキスしてくれた



それからしばらく二人はお互いの存在を確認するかのように、キスを繰り返した

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