Beautiful Summer Day's


『そろそろ切るわ。じゃあね、表の私?それとも裏の私?』
「じゃあね、ありがと。あたしは裏だよ。ううん、裏がいい」
『そう。また今度。親友の裏のゆか』
「うん、親友の表のゆか」

 ぷつん、と携帯電話は何も音を発しなくなった。携帯電話を畳に投げ出して、ごろんと寝転がる。

 最初はちくちくして嫌だった畳も、今では心地よい。

 じ、として耳をすましていればどたばたと廊下から歩いてくる音がよく聞こえた。その足音はこの部屋、あたしの部屋として割り振られたここで止まった。

「由夏ちゃん、ご飯食べるか?」
「あ、はい、食べます」
「敬語じゃなくていいのに」
「でも、年上ですし」
「気にしなくていいよ、たかが3歳くらい」
「…3歳は結構大きいですよ」
「はは、今日の昼飯は冷麺だって」

 明るく笑うこの人は、あたしの居候先の息子さん。健吾さんは今大学生だ。農学部で家の農家を継ぐ気はないらしい。矛盾してる気がするけど、まあ気にしない。



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