ユータナジー
私の注文に呆れた顔をしながら、先輩は言う。
「『さようなら』じゃなくて、『また明日』とか言えよ。」
「何故今更?」
「今だからだろ。」
「今だから?」
「俺のいる今だから、そう言え。将来人付き合いで変な目で見られんぞ。」
将来のある先輩だから言えること。
私はそれにひどく嫉妬してしまいそうになる。
「また今度、先輩。」
私に明日の保証はない。
明日にでも先輩が居なくなってしまったら、私の将来はそこで途切れる。
嫉妬してしまう前に、家に入る。
…笑顔で言えば良かったな。
少しの後悔をしながら。