ユータナジー
すぐに鋭い眼をして、相手を睨む先輩。
「どこに眼つけてんだよ?」
勿論、顔ですよ。
真面目にそう答えてしまうような質問を、男の人は吐く。
「喧嘩売ってんのか?」
先輩の言葉に空気が張り詰めた。
こっちに引っ越して来た時は、1日に何度も流れた喧嘩の噂。
今じゃ滅多に聞かない。
「…先輩。」
駄目だと思う。
折角の光ある未来なのにそういう風に、知らない人との喧嘩で駄目にしてしまうのは。
私は先輩の腕に触れる。
我に返る先輩は、こっちを向いて「悪い。」とだけ言った。