ユータナジー
笑ってみせれば、先輩は私の体に腕を巻きつけて力を込めた。
「痛いです。」
「体で喜びを表現してみた。」
「わかりました、でも痛いです。ろ…肋骨が折れそうなんですけど。」
本当に体がキシキシと鳴ってきた時、先輩から解放される。
近づいてきた先輩の顔に目を閉じて、口付けを受けた。
「高梨先輩、今度デートしませんか?」
初めての約束。
約1年間付き合って、初めて。
正直、言うつもりはなかったけど思わず言葉が出ていた。
やはり驚いた顔をした先輩。
「そんなに驚かなくても。」
「いや、そういう類の話苦手そうに見えたから。」
「先輩、よく分かりましたね。」
まだ、腕の中にいる私。
さっき、三時間目の始業チャイムが鳴った気がする。