ユータナジー
なんで…、と三枝さんはうつぶせになった。
泣いているのかもしれない。
でも、勝った私がかける言葉はない。
言ったところで、それは慰めにしか聞こえないから。
「…嬉しいです。」
「え?」
「こうやって勝てて。現役の人と一緒にやれて。三枝さんと勝負出来て。」
「…こちらこそ、どうもありがとう。」
三枝さんはうつ伏せから顔を上げて、こちらに手を伸ばす。
私はその手を強く握った。
真っ直ぐなだけ壁がある。
その壁とぶつかれる三枝さんは…とても強い人だと思った。
「帰んぞ。」