ユータナジー
我を忘れたように三枝を追い込む彼女に。
俺は彼女のことを殆ど知らないのを自覚した。
そういえば、未来の話もなければ過去の話をした事もない。
竹刀が弾かれる音がした。
それは三枝の竹刀。
「小野塚先輩、一本。」
審判の声と共に三枝がうなだれる。
彼女は強かった。
「中学の時に少しやってたくらいです。」
ファーストフードのシェイクを吸い込む彼女。
「剣道を?」
「はい。全国大会優勝です。」
…どこが『少し』だ。
呆れて溜め息を吐けば、彼女は小首を傾げた。