ユータナジー

急に触られた不快感に眉を顰める。

「何ですか?」

教室内で待っていれば良かった、と後悔する。

「先輩はまだ来てないです。」

私は言って、さっさと腕を取り払おうとした。

「高梨、ヤバいんだよ。」

「…はい?」

よく分からない人。
ネクタイの色は確かに三年生で、先輩の友達?

…都合の良い解釈すぎる。

「高梨がキレる前に止めて欲しい。」

「キレる?」

「喧嘩になったら、全部ダメになる。」

…『全部』



…なんで。どうして。

私は足を動かしながら、考える。

先輩には未来があるのに。



< 54 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop