ユータナジー
急に触られた不快感に眉を顰める。
「何ですか?」
教室内で待っていれば良かった、と後悔する。
「先輩はまだ来てないです。」
私は言って、さっさと腕を取り払おうとした。
「高梨、ヤバいんだよ。」
「…はい?」
よく分からない人。
ネクタイの色は確かに三年生で、先輩の友達?
…都合の良い解釈すぎる。
「高梨がキレる前に止めて欲しい。」
「キレる?」
「喧嘩になったら、全部ダメになる。」
…『全部』
…なんで。どうして。
私は足を動かしながら、考える。
先輩には未来があるのに。