ユータナジー
俺をアクセルと例えるなら。
彼女はそれを止めてくれる唯一のブレーキ。
「…悪い。」
俺は相手の胸ぐらを放して、彼女の手に重ねる。
この冷たい、傷だらけの彼女の手を大事にしたいと感じた。
「帰るか。」
「今日は先輩の奢り決定です。」
「はぁ?」
「当たり前ですよ。迎えにきてくれなかったんだから。」
まぁ…しょうがない。
溜め息を吐いて、俺は彼女の手を引いた。
ちょうど、担任とすれ違い、「何かあったのか!?」と聞く姿がある。
「ちょっと加藤くんが転んだだけでーす。」
三枝の馬鹿にしたような声が聞こえて思わず笑った。