ユータナジー

卒業式では、涙が零れていた。



初めて知った、あの日先輩の喧嘩を止める為に、私を呼びに来た寺島先輩。

こんなにひん曲がった私に、真っ直ぐにぶつかってきた三枝さん。

私の生きがいでもあったいつだって、馬鹿に付き合ってくれた先輩。


『高梨、ヨシ。』


そう呼ばれた時は少し驚いてしまった。

由ってユウって読まないんだ!
ヨシっていうんだ!


…一年も一緒にいたのに私は先輩を名前で呼んだ事がない。

先輩は時々、“琥珀”と呼んでくれるのに。


知らず知らずのうちに零れていた涙は、スカートにシミを作って、すぐに無くなった。



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