ユータナジー
少し腕を広げた先輩。
私は立ち上がって、その腕の中に飛び込む。
「…柔らかい。」
「先輩、言い方が生々しいんですが。」
「本音だ、本音。」
クスクスと笑う声が耳元で聞こえる。
「…なんか、嫌な事思い出した。」
はい?
首を傾げようにも、先輩の顎にガッチリロックされて、動かない。
足の間に入っ私は、少し顔を動かして先輩の顔を見た。
「お前が…止めてくれた喧嘩の原因。」
「知ってます、なんか悪口言われたんでしょう?」
…誰のだかはよく分からないけど。
三枝さんから聞いたのはそれだけ。