ユータナジー
ハチ
彼女の家の事はあまり知らない。
第一、俺はほとんど彼女の周りの事を知らない気がする。
初めて家に彼女を連れてきた後、母親は嬉しそうな顔をした。
「だって喧嘩ばかりしてたあなたが、可愛い女の子を連れてくるなんて!」
手首の傷は見えなかったのかもしれない。
…けど、そんなことはなかった。
「上手ね、琥珀ちゃん。」
「得意料理はお粥です!」
…お粥って、得意なものの内に入れていいのか?
夕飯の手伝いをする彼女の袖は、ここから見ても分かるくらい捲られている。