ユータナジー
不意に強い力で彼女を抱き締めた。
骨がギシギシ鳴った気もする。
「痛い痛いです、先輩。」
…こんなにも愛しい。
守って、束縛して、優しくして、壊して、撫でてやりたい。
「…ごめん。」
「先輩、腕の力が緩んでないです。」
「もうちょっと。」
でもきっと、守られて、優しくされて、包まれていたのは俺だ。
彼女は優しいから、人を傷つけられない。
彼女が一番恐れるのは、きっと。
他人を失うこと。
「先輩が羨ましい。」
呟いた彼女の声が、ハッキリと聞こえた。