ユータナジー
横たわる人は、確かに女だったけど彼女ではなかった。
ひどく安堵した自分は最低だと思った。
はねられたのが彼女じゃなく他人だった事にホッとするなんて。
「もうすぐで救急車着くから。」
医者のような女は、倒れる女に声をかける。
俺は───彼女を探す。
また携帯に電話をかける。
どこにいるんだろうか。
辺りを見回しても、野次馬とかコンビニの灯りしか見えない。
どこからか、パトカーのデカい音。
その中に聞き慣れた着信音が聞こえた。
野次馬の中…?
けれど、着信音のする方は反対に…。