ユータナジー
安らかにこの世界から飛び立てたなら。
死を望んでいた私は、そう思いながら自分の身を捨てた。
…私が望んでいたのは死ではない。
ただのリセット。
目を開ければ、光が入り込んできた。
桜の花びらが散る。
もうすぐ春も終わる。
彼女は目を覚まさない。
まるで、生を拒むかのように。
俺は午後はフリーだから病院に向かった。
彼女の母親が、病院に一度も来ていたけところを見たことがない。
頻繁に病院に行く俺が見ないくらいだから、多分来ていない。
バスに乗る直前、電話の着信音が鳴った。