bitter sweet
Ⅱ.IN THE DARK
∞ 雪和 side ∞
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担任が黒板に私の名前を書く音が響く。
その間、前の学校のセーラー服を着ている私は、新しいクラスのみんなの視線を受ける。
「はい、今日からみんなの仲間になる“瀬戸 雪和”さん。じゃあ瀬戸、一言みんなに挨拶して」
「はじめまして。瀬戸 雪和です」
「……それだけか? もっと自分をアピールしとけよ」
「……関西のT市から来ました。これからよろしくお願いします」
アピール、なんて思いつかない。今だって充分に恥ずかしくて、この場から逃げ出したいくらいなのに。
先生が諦めたように溜め息をひとつ吐く。
「……よし、じゃあ瀬戸の席は……あの真ん中の空いてる席な」
言われた席に向かう私の耳に、「あの制服可愛い~」の声が飛び込んで来た。
うん、私もこの制服はすごく気に入っている。でも、この学校は、お世辞にも“可愛い”とは言いがたい濃紺の地味なブレザー……これからはアレを着なきゃいけないと思うと気が重い。
HRが終了するとすぐに、ひとりふたりと集まり、私の机はあっという間に取り囲まれた。
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担任が黒板に私の名前を書く音が響く。
その間、前の学校のセーラー服を着ている私は、新しいクラスのみんなの視線を受ける。
「はい、今日からみんなの仲間になる“瀬戸 雪和”さん。じゃあ瀬戸、一言みんなに挨拶して」
「はじめまして。瀬戸 雪和です」
「……それだけか? もっと自分をアピールしとけよ」
「……関西のT市から来ました。これからよろしくお願いします」
アピール、なんて思いつかない。今だって充分に恥ずかしくて、この場から逃げ出したいくらいなのに。
先生が諦めたように溜め息をひとつ吐く。
「……よし、じゃあ瀬戸の席は……あの真ん中の空いてる席な」
言われた席に向かう私の耳に、「あの制服可愛い~」の声が飛び込んで来た。
うん、私もこの制服はすごく気に入っている。でも、この学校は、お世辞にも“可愛い”とは言いがたい濃紺の地味なブレザー……これからはアレを着なきゃいけないと思うと気が重い。
HRが終了するとすぐに、ひとりふたりと集まり、私の机はあっという間に取り囲まれた。