bitter sweet
「なーんでいきなりテストなのよッ!!」
「そうだよ! だいたい集中してないからって、なんで全員なんだよ!? そいつらだけ受ければいいじゃんよッ」

 先生がいなくなった教室――口々に文句を言い放つクラスメイト。

「ちょっと! なんで私達が責められなきゃいけないの?」
「つーか、そもそも集中力切らせる原因作った瀬戸が悪いんじゃん!?」

 クラスメイトの視線が一斉に私に注がれる。

「瀬戸さん、その訛り取れないの?」
「そういや、関西出身の女優ってほとんど訛りないよね。せめて授業中だけでも訛らない様にしてくれない?」
「だよなー。本読むたび、いちいち訛られんのもウザいしなあ」

「そ……んなん言われたって私……」

 この喋り方しか出来ない。私が生まれて今まで当たり前の様に使って来たんだもの。

「ねえ、この街でずっと暮らすんでしょ? だったらまず話し方を直してよ。それが嫌だって言うなら、今後一切喋らないでよね」

「ッ……な!!」

 なんでそんな事……!そう怒鳴ろうとしたけど、私を見るクラスメイトの冷めた目――私はなにも言えなくなってしまった。



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