bitter sweet
 マンションの6階――605号室。

 黒と白を基調とした落ち着いた部屋。

「まあ、適当に寛(くつろ)いでてよ。コーヒーでいい?」

「あ、はい。すんません」

 肩からギターケースを降ろしながら答える。

「そんなに緊張しなくていいよ……とは言っても僕とはほぼ初対面だから無理ないか」

「あの……叔父さん」

「“真(マコト)”」

「……へ?」

 叔父さんが二人分のマグカップを運んで来る。

「どうも“叔父さん”と呼ばれるのは、自分が老けた気がするからね。僕は佐々木 真。31歳で気ままな独身、職業はイラストレーター」

「さ、さんじゅーいち!?」

 めっちゃ童顔……てっきり23、4歳かと思ったと正直に言うと、叔父さ……マコトさんは柔らかく笑った。

 夕飯を食べながらマコトさんはいろんな話をしてくれた。
 俺が聞いた事のない話……昔この街にばあちゃん(俺からみたらひいばあちゃん)がいて、おばあちゃんっ子やったマコトさんが家族と離れて暮らしてた事(その間に関西訛りもすっかり取れたらしい)、親父も昔は相当なヤンチャやったとか……全部が全部、初めて聞く話ばっかりやった。




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