bitter sweet
 ようやく落ち着いたらしい男の子が顔を上げる。

 ふいに男の子がこっちを向いた時に目が合ったような気がして、慌てて身を隠した瞬間、







「きゃあッ!?」

 突然の強い風――それにより教科書に挟んでいたプリントが舞い上がる。

「あっ!? ちょ……ウソッ!?」

 必死で伸ばした手を嘲笑(あざわら)うかのように、プリントはフェンスを越えひらひらと落下していく。

「ウソやーん……なんで風なんか吹くんよ~」

 拾いに行こうとドアに向かいかけ、立ち止まる。

「いま、授業中やん……」

 拾いに行くまでに誰にも会わないという保証はない。下手すれば、教室へ連れて行かれないとも限らない。

「でもこうしてる間にもプリントが……ッ」

 ドアに近付いては離れ、を繰り返していると誰かが階段を上って来る足音が聞こえた。

 誰?先生?見つかっちゃう!だけど、とっさに身を隠そうにもここは校舎の屋上。隠れられる場所などあるはずもない。

 カチャ、とドアが開く音がした――!!



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