bitter sweet
「何してんねん、お前」

 ぎゅっ、と目を閉じている私の耳に慣れ親しんだ方言が飛び込む。

 え?関西……弁?驚いた私の視線の先にいたのは同い年くらいの男の子……手にプリントを持っている。

「……あ」

 私のプリント――その視線に気付いたのか、男の子はプリントに目をやる。

「なんや、コレお前のんか? えーっと“瀬戸……ゆきかず”? お前ニューハーフか?」

「“ゆきな”よッ!! 返して!」

「お前な、俺はコレ拾(ひろ)た恩人やぞ。“返せ”言う前になんかあるやろ」

 確かにお礼くらい言うべきかもしれない。一応拾ってくれたんだし。

「……ありがと」
「聞こえへんなぁ~っと!」

 ……~~ッ!!コイツ性格悪ッ!!!!

「拾ってくれてありがとうございましたッ!! これでエエやろ? それ返してよ」

「うーわッ! 可愛(かわ)いない言い方……ってかお前も関西人か?」

「関係ないやん!」

 ひったくる様に男の子の手からプリントを取り返す。

「あほか! 俺明日っからここに通うんや。関係大アリや」




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