bitter sweet
「明日?」

「そうや。明日俺が華々しくデビューすんのに、先に関西人おったりしたら俺全然目出たへんやんけ」

「…………」

 男の子は鼻息を荒くして捲し立てる。

「目立ったかて、何もエエ事あらへんのに」

「何ゆうてんねん! 世の中目立ったモン勝ちやろ……お前、さては――目立ってんねやな? くっそ先越された!!」

 地団太(じだんだ)を踏み本気で悔しがる男の子……コイツあほちゃうやろか。まるで『目立つ=人気者』って公式しかないみたいな言い方。

「私、別に目立ちたくないし、自分(※方言で『あなた』の意)目立ちたいんやったら勝手にしたらエエやん」

「お、ホンマか? 後で取り消したって聞かへんからな」

 ……おめでたい奴。もし同い年だったら絶対同じクラスになんかなりたくない。

 何だかんだと言い合っている内、再び屋上のドアが開いてスーツ姿の男の人が顔を覗かせた。

「ああ、和紗くん。こんなとこに……随分探したよ」

「やべ……校長室行く途中やったんや」




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