bitter sweet
「とにかく送ってくよ。それに、女の子が遅くまで男の部屋にいるのは良くないよ」

 ね、とマコトさんが俺に向いて言う。一瞬、その視線にたじろぐものの、マコトさんの意見に同意する。

 ……雪和、こっち向けへん。謝った方がエエかな……でも、俺は雪和とキスしたかったんや。
 雪和が……もしマコトさんの事を好きでも、俺は雪和にキスしたかった。

 帰る準備を進める雪和とマコトさんに「待って! 俺も行くッ」とブルゾンを掴み、2人についてった。







「じゃあね、ゆきなちゃん」

「はいッ、送ってくれてありがとうございました」

 ぺこり、と礼儀正しく言うと俺の目を見る事なく「じゃあ、学校で」とだけ言って、雪和は真っ暗な家の中に入って行った。

 車のデジタル時計は18時38分。周りの家は明かりが点いてんのに――今の時間ってだいたい夕飯時やんな。アイツ、一人でメシ食うんやろか。

 雪和ン家の電気が点くのを確認してから、マコトさんが車を走らせる。

 そん時、えらいこっちをジロジロ見とる、犬を散歩さしてるおばちゃんと擦れ違った。


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