bitter sweet
「和紗くん、何か怒ってない?」

 車を走らせながらマコトさんが聞いてくる。

「べっつにぃ~」

 ホンマは怒ってるけど。だって、マコトさんが帰ってくんのがもっと遅かったら雪和とキス出来てたはずなんやからッ。

「もしかして、邪魔しちゃった?」

「……ッ!?」

「あ、図星だ」

 くすくす笑うマコトさん。ぽやぽやしてそうでも、男としては人生の先輩。俺の行動は完全にマコトさんに読まれとった。

「……もうちょい遅く帰って来てほしかった」

「ごめんごめん。……でも、ちゃんと自分で責任が取れない内は軽はずみな行動はしない方がいいよ」

「……キスも?」

 助手席で流れる景色を見ながらマコトさんに尋ねる。

「ゆきなちゃんはOKした?」

 俺は黙って首を横に振る。

「女の子はムードを大切にするからね。ファーストキスなら、尚更じゃないかな」

 大人な意見。ムード……か。なんか、雪和がマコトさんに惹かれる理由が分かる気がする。……でもッ負けたない!!

 ――俺は雪和が好きや。マコトさんにも誰にも、絶対!渡したないッ!!



< 48 / 89 >

この作品をシェア

pagetop