bitter sweet
「あーッ! もうやめやめッ!!」

 考え過ぎるのは私の悪い癖だ。

「よし、ココアシフォンに決定! 一応、練習してた方がエエよね」

 自分の部屋を出て階段を降りる。日曜日なのに、相変わらず両親は接待ゴルフやら婦人会やらで、それぞれ外出している。

「えっと……材料は、薄力粉と玉子に……ココアパウダー……は無いなぁ」

 買いに行かなきゃ。帰ってからすぐに取り掛かれる様に、テーブルにシフォンケーキ型を用意して家を出た。






「……やっぱりマフラーしてくるんやった」

 家を出た時はそんなに寒くなかったのに、買い物を終え、店の外に出た途端寒さが堪える。

 小走りで家に帰り着くと、鍵を掛けたはずの玄関が開いている。

 やだ……泥棒やないよね?そうっと音を立てずにノブを回す。

 玄関には脱ぎ捨てられたベージュのパンプス。……お母さん?いつもは几帳面に履き揃えてるのに……。

「お母さん? 帰ってるん?」

 呼び掛けても返事はない。買い物袋をテーブルに置くと、二階から物音が聞こえた。

 あれ、お母さん二階?なんやろ……?

 階段を上がると、自分の部屋のドアが開けっ放しになっている。


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