bitter sweet
 開け放されたドアから部屋を覗くと、お母さんが私の机の上やら引き出しやらを引っ掻き回している。

「お、母さん? 何……してるの?」

 私の声に気付いたお母さんが怖い顔で振り返り、私に近付く。

 何?お母さんどうしたの――?







 パシッ!

 左頬に鋭い痛み……なんで?どうして叩かれなきゃいけないの?

「あんたッ、一体何してるんよッ!?」

「……え……え?」

「とぼけんといてッ! 近所の奥さんがちゃんと見てはってんからねッ!!」

 なに?見てた、って何を――?訳が分からないまま叩かれた頬を押さえ、興奮しているお母さんに尋ねる。

「ちょっと待ってよ、見た、って……?」

「……あんたがッ! 男の人の車から降りてくんのを見た人がいてんのよッ!」

「…………」

 車……男の人、ってマコトさんに送ってもらった時の?

「お母さんッ、聞いてあの人はね……ッ」

「中学生を遅くまで車で連れ回すなんて、まともな人やないわッ! あんたまさか……援助交際してんちゃうやろね!?」

「――!!」

 なんで?マコトさんはただ送ってくれただけ……和紗もいたし……。連れ回す、ってなんでそんな話になってるの?



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